検察官および裁判官の倫理教育PJ

【研究会報告】「無罪を示す証拠と検察官倫理」(2012年12月12日)

2013年04月24日投稿者:legal-hitotsubashi トピックス

2012年12月に、ワシントン大学セントルイス・ロースクールのピーター・ジョイ(Peter A. Joy)教授をお招きし、日本弁護士連合会と共同で、「無罪を示す証拠と検察官倫理」と題して、米国における検察官倫理のあり方を巡るこれまでの歴史と現在の議論について、研究会を開催しました。

 

20121212_ジョイ教授_講演写真(日弁連)

(写真)講演するピーター・ジョイ教授

 

【講演要旨】

全米各州の法曹倫理に大きな影響を与えている、全米法曹協会(American Bar Association, ABA)の法曹倫理モデルルールでは、検察管の倫理について、刑事事件における被告人の権利の尊重、被告人に有利な証拠の開示等の規定が定められています。これは、バーガー対合衆国事件判決(1935年)などで示されている「検察官の義務は、事件に勝利することではなく、正義を実現することにある」という考えを反映させたものです。特に、モデルルール3.8(d)では、「検察官は、被告人の有罪を否定し又は罪責を軽減する方向の、検察官が知るすべての証拠又は情報を、適切な時に開示しなければならない」と定めています。

 

しかし近年、米国において数々の冤罪事件が明らかとなり、その検証の結果、検察官による無罪を示す証拠のもみ消しなどが次々と発覚しました。この事態を受け、ABAではモデルルール3.8(d)に関連して、検察官が有罪判決後に無罪を示す証拠を発見した場合、検察官の証拠開示義務を拡大するという内容の、条項の追加が行われました(モデルルールの3.8(g)および(h)の制定)。

 

この追加については、検察官からも一定の賛成があったので全米に広がるかとも思われましたが、改正から4年たっても、各州での受け入れは進んでいません(この講演の時点で、7州が採択済み、9州で改正案が検討中)。その原因として、各州における定期的な規定見直しの時期がまだ来ていないことや、検察官から反対の動きがあること等が挙げられます。米国も日本と同様、司法改革の最中といえます。

 

*研究会の概要(終了しました)

■日時: 2012年12月12日18:15~20:00

■場所: 弁護士会館17階 1703AB会議室

■研究会テーマ: 「無罪を示す証拠と検察官倫理~冤罪を生まないために、アメリカの検察官が求められていること~」

■講師プロフィール:  ピーター・ジョイ氏(Peter A. Joy)

ワシントン大学セントルイス・ロースクール教授

オハイオ州(1977年~98年)及びミズーリ州(98年~)で弁護士登録・活動。クリニックでの活動(直接代理・指導担当)、プロボノ活動等を行う。98年から同校教授及び刑事クリニック所長。クリニックでの指導のほか、訴訟、法曹のあり方、比較法曹倫理等で教鞭を執る。